カナード翼機の歴史
2014.09.17

僕の作品は、主翼の前に小さな前翼が有る設計で、先尾翼機(カナード翼)(前翼式)(エンテ式)などと言います。


この写真は、僕の事務所に置いてあります模型キットのゴッサマーアルバトロスとライトフライヤーです。

         

前翼機の歴史はライト兄弟の「ライトフライヤー」に始まり、バートルータン設計の「バリイージー」無給油無着陸で世界一周をした「ボイジャー」や、人力飛行機でドーバー海峡を横断したポールマクレディー設計の「ゴッサマーアルバトロス」、桂文珍さんが所有している「スピードカナード」等が有名ですね。



           


第2次世界大戦末期の日本では鶴野正敬大尉設計の「震電」やアメリカでは「アセンダー」等も開発され、試験飛行までの資料が残っています。


          

ライト兄弟はあの時代に風洞実験装置を作り、理論的な設計を行っている事に驚きます。さらには飛行機に積むための軽量な水冷エンジンを独自に作っているライト兄弟の技術力にも驚きます。

僕のかってな想像ですが、初期の飛行機の開発にあたって、翼に使われる布に油性の塗料を塗って完全に空気漏れがない翼を作らなければ、全く揚力を得られない事を理解して設計製作をした人たちは、きっとほんの一握りだったのではないかと思っています。


でも、ライト兄弟は風洞実験をしながら、かなり正確に揚力係数まで割り出していますから驚きです。

    

二十代のころ、僕は終戦間際に試験飛行したという「震電」と言う機体にとても興味がわいて、どうしても作ってみたかったのです。そのころ性能の良いラジコンプロポが出始めたので飛行機を作り始めました。最初は「ポンコツ号あいちゃん」と言うクイックビルトの機体から始めたのですが、3機目には設計から翼リブの削りだしまで自作で、スパン180センチ、プッシャ―タイプ先尾翼機を飛ばしています。

    

カナードタイプの航空機の技術資料が手に入らない時代ですが、とりあえず出来上がった先尾翼機は、仲間のあの新谷さんに試験飛行をお願いし、初フライトして無事着陸もしましたが、重心位置は合っていたのですがいくつか基本設計が間違っていました。

前翼の向い角の設定、燃料タンクの位置、エンジンのオーバーヒート、離陸時に地面にぶつかってしまうプロペラなどの問題と、着陸の時にノーズギヤが何度もバウンドしてしまうこととかいろいろです。その他にはプッシャータイプ用のピッチが浅くダイヤの大きい逆回転のプロペラが手に入らないので、仕方なくエンヤ19BBエンジンを逆回転型に自分で改造したりなど、それから1か月がかりで完成して安定した初フライトです。


プロペラ後流が胴体に当たることがないプッシャータイプの設計は、まるでグライダーのようにとても安定して飛行しました。

そしてその頃日本にハンググライダーが入ってきました。テレビでアメリカのハンググライダーのフライトシーンを数回見ていたので「まず最初はこれだー!」と、思ったので、1975年(25歳)の時すぐにゲイラカイトのような初期型中古機を購入しました。でもそれは、ルスツの山頂からまっすぐ飛行しなければ、着陸場には届かないくらいの滑空性能でした。(今現在のパラグライダーの初級機よりも滑空比が有りませんでした。)

    

僕は26歳からハンググライダーを始めましたが、38歳でルスツの仲間に頼まれてハンググライダースクールを始めたのです。20年もするとデッドストックのハンググライダーが少し出てきたので、2007年、そのジュラルミンパイプで雪の上をプロペラの推力で走るトライクを作って(北海道新聞の朝刊の表紙に掲載)みたりしていましたが、いよいよ飛行機を作ることにしました。1ページにロールアウトの写真を載せています。

2007年3月 ホームビルト機 パワースレッド完成 3月14日ロールアウトの翌日、北海道新聞 朝刊の1面に載せていただきました。最高時速60Kmで雪原を疾走します。



基本的にお正月休み以外は休まず働く僕。作る場所も作成する時間もないのですが、材料が有るので作り始めることに決めたのです。
   

               


骨組みがほぼ完成して外に出してセールを着せてみると、セールにキールポケットが有ることに気がつき、ハンググライダーそのものの向かい角を15度も間違えていたので、フライングワイヤーをもう一度作り直しです。(基本設計は、前翼の向かい角は主翼の向かい角よりも小さく設定して設計しなければならないのです。)


主翼を組み立ててみるとディレクションスタビライザーのトゥインも少し間違っていました。パイプフレームとセールはもう一度作り直しです。(翼を広げて組み立てたままで置いておける場所があれば、このような失敗はないのですが・・・)

2014年5月 仕事の合間の風のない日、機体を外に出してコツコツと制作です。

            

そんなわけで、2本のフロントストラットの延長やフライングワイヤーの作り直しとかがかなり大変です。シートポジションもスティックが少し遠いのでスティック位置の作り直しと左側のつかまり棒(なんという名前なのかよくわからないのですが、ジェット戦闘機には、パイロットにものすごいGが掛かるために、重くなった自分の体や頭をホールドするために、左手で握るつかまり棒が有ります。僕の場合は操縦席シートがフレキシブルで動くので、操縦スティックを正確にコントロールするために必要)の位置を揃えて作り直しです。

        

他には、作製した前翼の保管が悪かったために、セールに10センチほどの大きな穴が開いてしまい、パッチを張ってとりあえず直した。(ネズミに食われてしまったのです。テストフライトの後にきれいに直します)

            

5年も火を入れていなかったエンジンはキャブレターが不調なので、ワルボロのキャブレターを分解し、ダイヤフラムなどの交換やキャブクリーナーを使用したりしてエンジンは回り始めました。(どんなものでも直したり作ってみたりするのが大好きな僕です。) 


それから念のためにノーズギヤ(前輪)を作成しました。最初の点検調整のタキシング時に、僕の足が付いて行かなくなって、バリ・イージーの駐機状態のように転んでしまうような気がして、イレクターパイプで適当に作り、機体にビニールテープで縛って取り付けです。イレクターパイプなのでノーズギヤはかっこ悪い形をしていますが、ロールアウトまでのとりあえずの策です。

僕にとって宿願の震電製作です。
2014.09.17

僕の生まれは恵庭市島松です。小学校の隣に家が有って藁ぶき屋根の農家です。たとえば隣の家までは200mくらいの田舎です。そこはいつも東に千歳空港着陸態勢の飛行機が飛び、南には島松演習場のジェット機の飛行訓練をいつも見ていました。

子供心に「大人になったら自分で飛行機を作って飛びたい」と、ひそかに思っていたのですが、50歳過ぎても性格が幼稚でとうとう大人になれなかった僕?でもなんとか操縦席に座って操縦桿を握って飛びたかったのです。

僕は、どちらかと言うと技術系ですから、普通の形の飛行機は誰でも作れそうなので、全く興味が有りません。そしてスタジオジブリの雰囲気で作成することに決めていました。


作り始めるにあたっての最初のイメージスケッチが1ページにUPしています。実は、この飛行機の設計図はこれがメインです。

まず、ハイエースに積み込むことができるように設計をし始めますから、ハイエースの内寸法がセーフティーホイールの幅であり、そのほかも簡単に分解して積み込むことができるように設計開始です。

         


20年前に使わなくなったハンググライダーや10年前使用しなくなった中古エンジンとかの寄せ集めで作製です。

本機は駐機状態でバリイージーのようにノーズダウンです。自分で持ち上げて立っていなければ離陸着陸ができない設計となっています。(あえてです。) 

日本の航空法では、着座姿勢で離着陸できるものが航空機とみなし、自分の足で離着陸する形式のものは、モーターパラグライダーやモーターハンググライダーのカテゴリーになるのだそうです。 

 

     

震電のスペック
2014.09.17
全   長: 5.5m

翼   長: 11.6m 垂直翼ディレクションスタビライザーを翼端に増設し翼長が伸びています。 

乾 燥 重 量: 75Kg 設計予想より5Kg以上重くなった。

主   翼: 初心者用ハンググライダー(デルタウイング社・ライトドリーム185)

翼 面 積:  17.2㎡

アスペクト比: 7

主翼はラフラインをそれぞれ15㎝伸ばして、翼弦のリフレックスをゼロにしています。

センターキールのキールポケットがトレーリングエッジで30センチもあり、翼中央部はキールよりも-7度の翼弦角度です。



前   翼: ハンググライダー廃材で骨組み製作、パラグライダー廃材のセールで作製

翼 面 積: 1.5㎡

翼   長: 2.5m

翼   弦: 60㎝

アスペクト比: 4.1

翼   型: 対称翼

翼   厚: 12㎝(翼厚20%)

最大翼厚位置: 30%

前 縁 半 径: 2%



エルロン翼: ハンググライダー廃材の骨組みと、ラジコン機用透明フィルムで作製

翼 面 積: 1.7㎡(両翼面積)

翼   長: 1.7m ×2(片翼面積)

翼   弦: 50㎝

アスペクト比: 4.1

翼   型: クラークY(ニュートラルポジションでも揚力が大きい)

ラ ダ ー: (方向舵) 省略しています。(今はまだありません)

垂 直 翼: ディレクションスタビライザー(主翼の翼端にウイングレットのような形を増設、ホーム センターで購入したアルミパイプとハンググライダー廃品のセールを縫製して作製)

垂直翼翼面積: 0.5㎡×2 トウイン角度 5度(20度)

※係留しているときはトウイン角度が20度ですが、飛行時はリーディングエッジのスパーが約15度も後方へしなうので、約5度です。低速機なので垂直翼は1㎡の面積が必要だと思うのですが、構造上フレキシブルウイングチップに取り付けるには0.5㎡がめいっぱいなので、大きなトウインを付けた。(たぶんロールアウト後に再調整です)

見た目はウイングレットですが、飛行中の直進性と低速で旋回したときに起きるかもしれないスライドの回復にとても大切な垂直翼です。普通に飛行するのに無くてもよいですが、垂直翼が有ることで、上昇しながらの旋回時に、映画トップガンのようなフラットスピンに入りにくく、すぐに回復するのです。操縦音痴の人でも乗れるように設計です。

      

エ ン ジ ン: 単気筒80CC 2ストローク強制空冷エンジン、(リコイルスターター)

エンジン性能: 15hp/9200RPM  

燃料タンク:   12リットル混合ガソリン50:1

航 続 距 離:   飛行時間約3時間の予定(100Km(無風時))

プ ロ ペ ラ:   木製  ダイヤ 125㎝ ピッチ?

推   力: 約54Kg

取り付け角度: サイドスラスト左2度 ダウンスラスト0度

機体の重心位置は着座姿勢におけるパイロットの頭部位置になります。

機体重心位置と、推力線は同じ高さで設計しています。

   

着座するハーネスは、20年前のパラグライダーハーネス(ソフトハーネス)です。理由は、離着陸の時パイロットが走って離着陸する設計ですから、パラグライダーハーネスを採用しています。(飛行中のマイナスGを想定していない設計です)

コントロールスティックは第一興商のウィスパーに使用していた15年前の古いグリップです。クルーズロック付きなので気に入っています。エルロンとエレベーターは、ロッドリンケージで作っています。エンジンスロットルを含めた全ての操縦を右手だけでコントロールする設計です。

   

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