キャノピーのDライザーを延ばして飛ぶ危険性

2020.10.13

今年、モーターパラでアクシデントが有りました。
Dライザートリムを大きく延ばして高速で飛ぶ事ができるリフレックス翼に調整して、スピードの有る飛行を楽しんでいた時のアクシデントです。

大きなリフレックス翼形で高速で飛ぶ時に、ブレークコード操作でコントロールすると、一般的なアドバースヨウによる旋回理論が成り立なく無り、エルロン効果が出てしまう事、オーバーシュートする翼形になる理論などは、一般フライヤーに説明しても理解していただけないと思っています。
最近の高速性能が素晴らしいキャノピーに潜む、単純で理論的な危険性です。

販売メーカーが「取扱説明書に、Dライザーを延ばして高速で飛行するときはブレークコードでの旋回をしないように、その危険性と注意書きは、ちゃんと書いていますよ」と言っても、説明書を読んで理解して飛行する人はあまり居ないですし、説明書を読んでいても、理論的に理解できる人は、教員も含めてほんの一握りで有り、一般的なブレークコード操作をしている中でアクシデントが起きてしまいます。

僕は40年以上前、ラジコン機でいろいろな翼形リブを作って翼長2mの機体に取付て調べています。
低速で離陸着陸ができる翼形を作った時に起きたことですが、翼形はブレークコードを引き込んだ時のようなトレーリングエッジが下がった翼形です。
ピッチ安定が無く、エレベーター操作で補正しなければ、どんどん地面に向かって加速していきます。飛行速度が速くなっても、翼の揚力重心位置が前方に移動しない事が起きるのです。

ハンググライダーやパラグライダーは無尾翼機はに分類されます。
時速40Km以下のアドバースヨウが効く範囲で飛ぶことで、パラグライダーはとても安定していますが、Dライザーを延ばして大きなキャンバーリフレックス翼形にトリムしすることで飛行速度を上げると、ブレークコードでの操縦範囲を超えていて操縦理論が複雑です。

キャノピーの設計におけるリフレックス翼のピッチ安定理論と、アドバースヨウの理論には大きな隔たりがあります。
例えば、ライズアップしたキャノピーが、わずかに頭上を越えようとしたときに、ブレークコードを腰の位置まで大きく引かなければ、キャノピーが止まってくれないのはその為です。
でも、低速で飛行しているときのパラグライダーは、キャノピーの高さの揚力重心位置と、約6m下のパイロットの重心位置とで、振り子バランスでとても安定して飛行しています。

後書き
僕は35年ほど前に東京の航空会館でハンググライダーの教員試験を受けています。教師はオーパカイトの保呂田さんです。
その時にドイツで開発されたホルテンという無尾翼機の説明をしながら、翼端のねじり下げ効果や速度が上がることによって揚力重心位置が前へ移動する揚力分布図を黒板に図を描きながら説明しています。
例えば、既に引退したコンコルドやSR71は、胴体の前後に燃料タンクを別々に分けて作られていて、音速で飛ぶときには前に、音速以下では後ろに燃料を移動して、翼の揚力重心位置の移動に伴う補正に、燃料の重さを利用している事等など、独自の知識で10分~15分ほど皆さんに説明をしています。
(教員試験を受けに来た皆さんを生徒に見立てて、教員として「ハンググライダーの飛行安定について」と言う与えられたテーマで、教員としての説明です。

航空事故は、知識が無かったことによる事故がいくつも有ります。

3年前に見たモーターパラのアクシデント映像で、競技用の20mくらいの高さの大きなパイロンコーンを並べていて、そのパイロンコーンの高さよりも低く飛行した事で、コーンから出るカルマン渦巻でキャノピーが潰れて、墜落している映像を見ました。
例えばそれは、サイロの風下に発生しているカルマン渦巻と同じで、キャノピーが簡単につぶれてしまうほど渦を巻いています。
大会委員にカルマン渦巻の知識が無くて、そのようなタスクを計画したことによるアクシデントでした。

時々冬の雪雲映像で、北朝鮮の2500m級の山々から出るカルマン渦巻が日本海を渡り、石川県や新潟にまで届いている気象映像も時々見ています。
ポールに縛られた大きな国旗が、そよ風の中で大きくたなびくのは、太いポールの後ろに発生するカルマン渦巻のエネルギーによるものです。

風上にある地形や障害物からくる乱気流、二つ玉低気圧と見えない前線の通過、プロペラ後流や後ろから同じ高度で飛行する事の危険性、ブレークコードを引いて飛行する危険性、そして最近は極端にDライザーを延ばすことができる高性能なキャノピーについてなど、ディスカッションの中で飛ぶ事への知識を深めてモーターパラグライダーを楽しみましょう。