飛ぶための豆知識
2018.08.14

密度高度とレイノルズ数、そして翼面荷重について


密度高度について分りやすく説明をします。


暖かい日に、海抜の高いところで離陸しようとすると、なかなか離陸しません。気温が高い日、海抜が高い所は空気密度が膨らんでいて空気密度が低いのです。

冬になると空気密度が上がりわずかな風でソアリングができます。冬のモーターパラは、あまり走らなくても離陸するのが分かります。

レイノルズ数について分りやすく説明をします。

滑空性能50対1のセールプレーンと同じデザインで模型グライダーを作っても、空気密度に対して、翼の長さと面積が小さいせいで、まったく同じ滑空性能にはなりません。
翼の大きいタンデム機は、レイノルズ数が有利ですから、二人分の重さの面積は必要ないのです。


まとめ


富士山の山頂から何時ものように離陸しようとすると失敗します。

富士山山頂は気温が低いので空気密度が高いのですが、高度3,770m位からの離陸は空気密度が地上の半分くらいですから、走っても走ってもなかなか離陸しないのです。

富士山から最初にハンググライダーで飛ぼうとした田中さんは、向かい風が無かったために走っただけでは離陸速度を超えられないと判断し、スキーをはいて離陸しようとしていました。


キャノピーの中の空気


キャノピーの中に重もたい空気が入っています。
空気は1㎥あたり1.2Kgの重さが有り、ふくらんだキャノピーの中に入り込んでいます。
キャノピーの大きさによって違いますが、5Kgから10Kg空気がキャノピーの中に入っています。
動きの無い時には関係ない重さなのですが、キャノピーが動くと、遠心力や慣性の法則に伴う重さが現れて、サットやスティーブルスパイラル(バーチカルスピン)の時にキャノピーの重さに加えてキャノピーの中の空気の重さによって、その理論が成り立ち、旋回の中心がパイロットとキャノピーの内側になるのです。

強風のライズアップの時にはキャノピーの揚力の他にキャノピーの中の重い空気が急激に持ち上がるので、慣性の法則でパイロットが持ち上げられているのです。


僕らはキャノピーの重さに加えて、その空気の重さを含めて、キャノピーをコントロールしているのです。


知識がなかったことによる事故


それはリリエンタールの昔から、空を飛ぼうとする事において、幾度となく「知識が無かったことによる事故」が繰り返されてきました。


その残念な過去をふまえて、パラグライダーからジェットエンジンで飛ぶ飛行機まで、より安全な性能や対策が行われてきています。


僕がパラグライダーを始めたころは、初級機なのに日常的にキャノピーが潰れ、回復操作をしなければならない時代から飛び始めています。デザイナーが翼の理論や知識を持っていないし、スカイダイビングのパラシュートをもう少し改良した程度の翼であった時代からこれまで改良がくわえられて、近年の初級機の絶対的な安全性能は、素晴らしいものです。


空を飛ぶために、コリオリの力を含めあらかじめの知識を持っている事で、不意に遭遇する魅力的な上昇気流を最大限に利用することが出来ます。そしてその風を幾度も体験する事で技術が磨かれ、対流する気流の奥深さにとらわれてしまいます。



失速について


僕はハンググライダーを始めてから42年ほど空を飛び続けていますが、パラグライダーは失速に至る飛行速度範囲がきわめて狭い乗り物です。初級機は失速しにくく穏やかな失速特性と回復特性で設計されていますが、ハイエンドBクラスあたりからは、くれぐれも飛行速度を保って離着陸をしてください。


とくにブレークコードの引きすぎの状態では失速に近いのでとても危険です。離陸直後に失速して林の中に降りしまったり、気流が不安定なのにブレークコードを引きながら進入し、ふいに失速して激しく着地するのを何度か見ています。そしてブレークコードを引きすぎていると速度が無いので、フルブレークをしてもドスンと着陸します。


翼で飛行するすべてに言えることは、失速すると墜落します。くれぐれもポーラーカーブをイメージして、最少沈下速度よりも速度を保って安全飛行してください。

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