冬のサーマル
2018.08.15

冬の雪原は大気が安定しています。上昇気流は太陽熱が当たって乾いている林から出ています。特に密度の高い針葉樹は多くの太陽熱を吸収して熱を持ち始めます。

3月10日のカムイリンクスは、ほぼ無風でしたから、針葉樹の上空である程度の上昇気流を捕らえることが出来てステイ(その高度にとどまる)しています。

夏冬に限らず、上昇風を捕らえてステイできるのであれば、いつまでもその上昇気流を丁寧に拾い上げて頑張ります。たとえわずかな上昇気流でも離れず、より上昇するコアから外れないように努力し続けます。
僕の体験ですが、そうしてネバっているうちにとうとう上昇し始めたことが何度もあるのです。

冬のサーマルは、夏のようなはっきりとした間欠泉のように上昇する周期がそれほど無い感じです。5分から15分くらいの間で上がっているいわゆるサーマルブローと言う感じではありません。
ですが、上昇しきれないサーマルも、サーマルブローの弱いタイミングで見つけた上昇風の可能性が有ると思っています。カムイでの10日の日も時々しかバリオが鳴らない不安定なサーマルでしたが、大きく旋回したり小さく旋回して上昇の良い旋回を続けていて、やがてジワジワと上昇し始めています。

一般的に、上昇し始めて高度が取れると、徐々にサーマルは安定して上昇し始める事が多いです。10日の日もそうでした。

僕の考え方は、少ししかバリオが鳴らないときや、旋回してわずかしか上昇しなくても、その上昇気流を無視してしまう判断は最悪です。ヒットした上昇気流から出て行ってしまうと、少なからず下降気流です。

サーマルに対してわずかな情報にもどん欲にサーチして、誰よりも手堅く上昇するのです。
サーマルをあきらめるのは、さんざん努力をしてからなのです。

冬の話に戻りますが、雪原の中の木立は、風が弱ければ上昇気流が出ています。上から見るとかなりスカスカな林でも、太陽光が当たっていれば出ています。気温が低ければ低いほど出ています。でも、勢いよく上昇するほどではないので、クロカンに出るのなら、たとえば防風林の上を飛行コースらすることで、何倍もの距離を稼げるのです。

この日のカムイリンクスは、マイナス5度くらいで、山の半分から上は樹氷になっていて、下の方の木がわずかな太陽熱で解けているのです。
ですから、かなり前に出て樹氷になっていない解けている木からのわずかな熱上昇風しか望めない感じでしたが、気温が低いことと針葉樹のその場所しか熱上昇風が望めない状況なので、最初からその上に直行でした。

高度が半分になってから、針葉樹の上で上がったり下がったり回しているうちに、わずかづつ上昇し、トップアウトして旭川の景色を見ることができました。

僕は、冬にモーターパラをやっているので、川から上がる上昇風や、防風林を超えるたびに大きく上昇したりを何度も体験しています。

零度以下に冷え込んだ日は川幅が有る川は、かなり勢いよく上昇気流が出ています。カムイリンクスのような、すく近くに石狩川が有るエリアでは、川に沿って上昇気流を利用できます。真冬でも川の水温は0度以上ですから、カチンカチンに冷え込んだ日には、大きな川や防風林にそって飛行する事で、距離を伸ばすことが出来るのです。
冷え込んだ冬にモーターパラで千歳川も越えよう飛行したことが有りますが、川幅30mほどの千歳川は強烈な上昇気流だったので、怖くなって千歳川の横断をあきらめたことが有ります。
でも、夏の川は川幅があまりなくても河川敷の林も含めて下降気流です。

後書き
冬は時折北海道の西と東に低気圧が接近してくることが有ります。低気圧と低気圧の中間になる部分は、互いに左渦がぶつかりあって、一時的に天候がとても安定するのですが、低気圧の移動に伴って突然強風になってしまいます。
その日の天気予報が風の向きが変わるような予報の時は、必ず天気図の確認をしてくださいね。



2018.08.15 23:50 | 固定リンク | 冬のサーマル
前線通過でクロカン
2018.08.15

前線に伴って南風の暖気と北風の寒気とがぶつかる所では、激しく積雲が出来たりして、飛行には危険なことが多いのですが、穏やかな前線通過は心地よい上昇風帯エリアになるのです。

橇負山ではこれまで何度となくその風に乗って上昇するパイロットを見ていますし、そのまま洞爺湖方向にずっと飛んで行ったパイロットが居ます。

その時の条件は、飛行中に風の向きがおおむね120度から180度変わるときにその現象が発生します。
たとえば、その日の橇負山の風の向きが南風から北風に変わる天気予報の日に、南風でソアリングをしていて急に北風になった時、北風の冷たい寒気が南風の暖かい大気の下に、クサビ形に刺さるように入ってきます。

飛行していたパイロットは、たいがい何が起きているのか分らず、どこをどう飛んでもいい感じで上昇し始めますからあわてます。
僕からの「風が北風に変わったので、上昇しているんだよっ」と無線で説明しても、理解してもらえないことがほとんどです。

洞爺湖まで飛んで行った斉藤君は、南風でソアリングを楽しんだ後、クラブハウス方向に飛んできて100m位まで下がってきてから、風が北風に変わってだんだん上昇していき、その前線による上昇風を利用して難なく洞爺湖まで飛行し、それでも十分な高さが有り、飛行していました。(その時なぜか「洞爺湖に着水可能です」と、無線が入りました)
噴火湾に近づくと、海風が強く入ってきていてそれ以上は行けません。

理論的には北風の中で飛んでいて、南風が押し寄せてきても、押し寄せる南風は冷たい寒気が地面からクサビ形になっているせいで、仕方なく暖気が斜面上昇風と同じようにかなりの高さまで吹き上がるのです。

以前のパラワールドに茨城で飛行中に南からの前線通過に乗って、前線帯にとどまるように急がずに遅れずに暖気の上昇風に乗ったまま北上して、帰りは仙台近くの駅から新幹線で帰って来た記事が有りました。

橇負山では、南風が日中に北風に変わる日が狙い目です。
前線帯から外れると沈下してしまうので、前後にサーチしながら飛行するのですが、押し寄せる前線よりも先の方に行くと徐々に上昇しなくなります。
後ずさりしすぎると、寒気の中に入ってしまい、普通の沈下速度帯に入り込んでしまい、暖気の上昇帯に戻りにくいです。
クサビ形の寒気と、上昇帯の暖気をイメージして、バリオメーターの音色で判断してください。

前線通過に伴うもう一つの飛行方法は、前線が天気図通り帯状に伸びている方向に高速で飛行します。低速で飛んでも良いのですが、クロスカントリー距離を伸ばすために高速で飛ぶのです。
前線方向に暖気の上昇帯をジグザグにサーチしながら飛行する事で、驚くほど簡単に距離を伸ばすことが出来ます。南東の風であれば簡単にニセコを超えてしまいます。

雲が発生していない前線の通過は、グライダーにとってまたとないコンディションなのです。繰り返しますが、橇負山では、南風が日中に北風に変わる日が狙い目です。

北風の日に南風が吹いてきたタイミングでも尻別岳方向に飛んでいけば前線に乗ることが出来るのですが、今までは元気よく京極方向に飛んで行ったパイロットは居ませんです。
たぶん、赤井川を超えて余市まで飛んで行けると思いますが、午後になると赤井川あたりまで海風が入って来ていて、さらに上昇し始めるかもしれませんが、北へは進めなくなって着陸です。

倶知安方向は、羊蹄山が独立峰ですから後ろに出来る強力な収束流に警戒です。風の強さにもよりますが、羊蹄山から5㎞以上は離れて飛行経路を取ってください。
橇負山で羊蹄山から風が来ている日は風が少し不安定ですが、8㎞離れているのでキャノピーが潰れたりはしないのです。



ウィンドシアで上昇
2018.08.15

ウインドシアとは、ダウンバーストを含む風の乱れの風ですが、一般的な西風の本流と、日本海から入り込む東の海風がぶつかる安定した上昇気流は、日本海側の山や海辺で日常的に発生しています。
ルスツでは本流が北風の時に噴火湾から風が入って尻別岳の上で積乱雲になっている事が有ります。

日本海側の海辺近くでは、たとえはモーターパラエリアで「エンジンを止めても上昇しているんだけど、どうしたらいいですか」と無線が入ることが有ります。
そんな日は、海岸線に沿って小さな積雲がずっと続いていたりもします。

浦幌町の十勝太エリアや石狩望来エリアでも、どちらも高度差50~80m程度の海辺のがけなのですが、その風に乗って300m以上も上昇する日が有るのです。
その上昇する風は、海辺と平行に上昇帯になっているのですが、ある程度の高さから上昇風は海方向に流れ出ていますから、そのままのんびり飛行していると岸に戻れなくなるほど海に出てしまいます。
海風のウインドシアを楽しんだ後は、内陸に飛行して上昇気流から回避し、高度処理をしてください。

海風が内陸まで入って来くる茨城のエリアでは、その風に乗って3000mも上昇する事があります。
西風と東風がぶつかって上昇する気流は、横方向にずっと続いていますから、どこまでも何時間も飛ぶことが出来ます。
たとえば十勝太ではその風に乗って白糠まで行けると思っています。

僕は、樽前山もその風に乗ることが出来るし、樽前山の地熱も手伝って3000mを超えて上昇することが出来る山だと思っていて、25年前に仲間と歩いて登って苫小牧方向に飛んでみたことが有ります。1機だけですが、びっくりするほどすれすれに千歳空港に着陸する戦闘機が降下していきました。
そして、20年ほど前にモーターパラの会が集まって千歳空港管制塔の会議室での管制官から「風不死岳から樽前山は戦闘機が目印にして降下してきて、ローパスする山なので、飛ばないでください」と、念押しで言われています。

海風が程よく入る形の良い山は沢山あるのですが、ルスツのような条件の整った山はなかなかありません。


クラウドストリート
2018.08.15

空を観察しているとクラウドストリートと言って、その日の風の方向に適度な積雲が帯状に延びている事が有ります。
ルスツでは、ウインザーホテルの方向や昆布岳方向から来ているのを時折見つけています。

クラウドストリートはその雲低にある吸い込まれる上昇風を利用して雲低近くまで上昇し、その雲に吸い込まれてしまわないように速度を上げたりジグザグに飛行したりしながら、次の吸い込まれる雲低へ、連続した上昇風のエネルギーを利用して飛び続けるクロスカントリーフライトです。

ルスツでは、西風の日に羊蹄山からクラウドストリートがしっかりと橇負山まで延びてきている事が時々あります。羊蹄山から出る収束流を伴って発生して帯状に延びてきているのです。

過去に一度死に風で羊蹄山からクラウドストリートが伸びてきている日に平川君がハンググライダーで西から離陸して上昇気流に乗って、そのクラウドストリートの雲低まで上昇したことが有ります。「そのままクラウドストリートに乗って、羊蹄山方向にずっと飛んで行けるよー」と、無線を入れた後、5~6㎞くらい羊蹄山に向かって飛んでいき、ターンして橇負山まで戻ってきたことが有ります。

クラウドストリートはその発生にいくつかの違う要素が有るのですが、おおむねある程度の上昇風の帯になっています。
セールプレーンやハンググライダーは高速で飛ぶことで一番上昇する芯を捕らえて雲低をドルフィン飛行が出来ますが、速度範囲が狭いパラグライダーは直線飛行では吸い込まれてしまいやすいですから、雲に吸い込まれてしまわないようにアクセルも使ってジグザグに飛行します。

クラウドストリートは、前線に伴って風の向きとは別方向にも作られますが、それとは別に2000m以上の高いところでは波のように何列にもなっている事もあります。ある程度風が有る日に発生しているせいで、パラグライダーではなかなか利用することが出来ませんが、たとえば羊蹄山に飛行して、トップアウトしてから、そこから出ているクラウドストリートを利用して飛び続ける方法が良いでしょう。
ルスツでは、その雲低にたどりつくことが出来ればのお話です。

僕は雲の観察が好きで、空を見上げる事が多いです。
南風の日はクラウドストリートがウインザーホテル方向から延びてきていたり、南西の風の日は昆布岳からずっと延びてきているのも必ず見つけています。
その日その時に発生している雲の種類で、ある程度のコンディションを見分けます。

7年ほど前、十勝平野を車で走っているときに、学術的にはまだよく分っていない地震雲(50~100mの太さが有って5㎞以上一直線に延びていてねじれている雲)を見つけていて、翌日にはその東の先で地震が起きていた事が有ります。

風や雲を観察して、その日の上昇気流を分析して確かめるようにフライトします。
風は、コリオリの力を超えて様々なエネルギーが存在していて、それを理解して、よりパラグライダーを楽しむことが出来るのです。



ウェーブ(山岳波)
2018.08.15

ウエーブとは、飛行中の風上にある山から吹き降ろした風が、次の山で斜面上昇風になる風なのですが、飛行している山の斜面上昇風が、たとえは温泉ホテルにあるウォータースライダーのようにきれいな風でウエーブ状況が出来ていて、飛行している山の高度の何倍もの高度までウエーブが続いている現象です。

僕はまだパラグライダーがなかった時代の35年ほど前に体験していますが、南南西の風に乗ってハンググライダーで尻別岳の西山まで飛行して、風上にターンした時に、バリオメーターがプラス3くらいで鳴りはじめました。軍人山からと思われるウエーブを感じたので、そのまま最少沈下速度を維持していると、高度1.800mくらいまではバリオメーターのプラス3くらいの一定の音を聞きながらの上昇をしています。
最少沈下速度まで速度を落としているのですが、少しずつ前進してしまうので何度か後ずさりを繰り返しながら、ほぼ同じところで果てしなく上昇していく感じです。この時は高度2,100mほどで頭打ちでした。

勢いのあるウエーブは、その後ろに次のウエーブもあるので、そこでも上昇できたのですが、第1波のような勢いのある上昇は得られませんでした。

20年くらい前には、尾野さんと言うパラグライダーパイロットが、南東の風でテイクオフし、貫別岳からのウエーブで1,000mを超えて上昇していました。「尾野さん、それは貫別岳からのウエーブだから心配しなくていいよー」と、僕から無線で伝えていたのですが、尾野さんは初めての経験だったので不安になって「もういいです」と、無線が入り、上昇の途中でやめていました。
上昇し続けた場所は、道の駅の北側の「どんどん市」のあたりです。

その次に離陸した守屋さんは、飛行コースを橇負山の斜面上昇風を利用して国道230号線まで高度が下がらないように前進してほしかったのですが、まっすぐ尾野さんが上昇した方向に向かってしまったので、ウエーブの手前で高度が無くなっていました。

ウエーブは程よい風の中で起きる現象なのですが、35年程前には滝川から離陸したセールプレーン(飛行機の形のグライダー)が、ピンネシリ山からのウエーブで6,000mまで上昇したことが北海道新聞に載っていました。

尻別岳で2100mでトップアウトした僕は、セカンドウエーブでほんの少し高度を持ち直した後、大滝村の双葉まで飛行し、そのまま美笛峠の先の千歳鉱山沈砂池まで行けそうな高度だったのですが、「明日も仕事があるから、けがをするわけにはいかない」と思い、はるか下で農作業をしている人を見つけて高度を下げて、農作業のおばさんたちに「着陸してもいいかい」と、大声を出して着陸していまーす!

パラグライダーではなかなかウエーブを体験する事は出来ませんが、それはとても安定した上昇気流ですから、もし遭遇する事があったら怖がらずに上昇し続けてみてください。

正確な知識を持って空に臨むことで、ふいに遭遇する魅力的な風を理解して、その風を最大限利用して飛ぶのです。



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