1 ルスツのサーマル
2018.08.16
ルスツエリアは噴火湾から橇負山まで風が入ってくることが多く、とてもフライト確率が良いエリアです。
その証拠に海からの湿った空気が橇負山まで入って来てクラブハウスからは山頂が見えないのに、尻別岳方向は山頂が見えている事が有ります。夏にはその風が尻別岳まで入って南風が北からの風とぶつかって、喜茂別の上空で大きな入道雲になっている事も多いです。
当然、橇負山で風がぶつかって入道雲ができる時もあって勢いよく上昇する日もあります。
サーマルコンディションは
橇負山のスロープソアリングゾーンは、林から上がってくる穏やかなサーマルで、テイクオフしてすぐにキャノピーが暴れてしまうことは有りません。
もし真下が林ではなく、サーマルが出るような条件であれば、周期のあるブローが山頂に上がってきます。
魅力的なのは、林の外側で発生しているサーマルです。すぐ近くの畑や道の駅の広いアスファルト面の地面温度が高ので、バリオが3m/secを超える勢いのあるサーマルが出ています。
エリア全体の上昇風とサーマルブロー
強い日差しの中で、サーマル源のその場所から出るブローも周期的に出ています。
上空から見て明らかにサーマル源に見える乾いた畑や、春先の乾いた枯草や、刈り倒して乾いた黄色い草なども、林や青草よりも温度が高く、10分前後の周期でサーマルの勢いが変化していることが多いですから、その上空に行ってもほとんど上昇しなかったり、勢いよく上昇するタイミングだったりしています。
一番勢いのあるサーマル源は
道の駅のアスファルトやカイト山の南斜面に上がってくるリゾートの広い駐車場アスファルトから出るサーマルです。
春先は道の駅の手前にある畑もまだ作物が伸びていませんから、サーマルもタイミングが合えば尻別岳に向かうことができる勢いの有る上昇が得られます。
着陸場の西の大きな畑もサーマルタイミングがよければ、一気に橇負山まで戻れるほどサーマルが出ていますから、着陸場に戻れる範囲であきらめずにトライします。
朝方の気温が低くて日中の温度が高くなる日や、着陸ゲレンデと山頂の気温差が有る日は、サーマルの勢いが有ります。
ちなみに、雨上りの畑では太陽の日差しのせいで畑全体に水蒸気が出ているときがありますが、水蒸気が畑の熱をうばっているせいで、サーマルは出ていません。
自慢話、
昔、毎年8月の最終土曜日曜日に行われる「留寿都村産業まつり」から「まつりの会場上空でハングでパフォーマンスをしてくれ」との要請があって、僕がハンググライダーで道の駅方向の畑のサーマルで山頂より少し高度をとって(まっすぐ飛んで行ったらそうなった)畑の上で大きなループで2回転宙返りをしたことがあります。
2 離陸前も飛行中も
2018.08.16
離陸の前に必ずフライト中のパイロットをチェックです。
すでに飛んでいるパイロットがどことどこで上昇しているのか観察し、飛行中も他の機体がどこで上昇しているのか目を凝らし、その日の上昇気流がどこに有るのか、他のパイロットが上昇しているのを観察します。
ニュースナウの書き込みのために、サーモセンサーで晴れた日にいろいろと地面温度を測定したことが有ります。草地の温度は15度前後でした。春の枯草や、刈り倒した乾いた枯草は25度前後でした。まだ野菜が伸びていない春先の畑の土は、乾いていると30度近くまで上がっている事が有りますが、つねに地中からの水分が蒸発しているせいなのか、表面だけは25度くらいが多いです。
アスファルトは日差しが弱くても周りのどこよりも温度が上がっていて、風の弱いカンカン照りの日は40度を超えたりもします。
アスファルト面は曇りの日でも周りのどこよりも温度が高いので、ある程度の上昇風が出ています。
離陸するタイミングは雲の動きを見て、サーマル源の地面が日陰になっていないか、地面温度が下がっているタイミングを避けて離陸です。
以前、中野さんが低くなりすぎて着陸場に戻れないときに「アスファルト道路の上昇風で戻ってください」と無線を入れて、道路の上を低空でずっと高度を保ったまま、とうとう着陸場まで余裕で戻ってきたことが有ります。もしそんなことになった時は是非試してみてください。
つねに地上のサーマル源、特に風がよどんでいる地形から周期的に出る勢いのあるサーマルや、斜面上昇風を観察しながら上昇気流を捕らえて飛行しますが、雲低近くまで上昇したならば、地上のサーマル源の上昇風がどこに上がっているか見当がつきにくいので、次の飛行コースは地上のサーマル源ではなく、近くにあるサーマル雲を目標にします。
バリオが少ししか鳴らないとき
その日のコンディションにもよりますが、上昇しない程度のサーマルも、粘ってねばってとうとう勢いよく上昇した経験が何度もあります。是非試してみてください。とうとう上昇し始める体験に出会えると思います。
バリオが少ししか鳴らないときや、旋回しても上昇し始めないときに、無視して次のサーマルを探しに行っても、結果的に下降気流をあえいで、駄目だったことが多いですし、粘ろうとしなかった人はそのまま着陸していて、その1フライトがもったいないと思います。
ネバって結果的に上がらなかったらあきらめればいいのです。
ねばっても結果的に上がらなかったとしても、1本のフライトを無駄なく全力で努力したことで、フライト技術が磨かれるのです。
ぶっ飛びコンディションでも
斜面上昇風が無い日でも、わずかな林よりも地面温度が上昇していると思われる上昇風をイメージして飛行コースを計画します。出来るだけ長く飛ぶ努力がフライト技術の向上になるのです。
ぶっ飛びのコンディションであれば、Bストールやピッチングやローリング、場周経路の練習をしてみるとか、ハーネスのサイドベルトを緩めて抗力を少なくするリクライニングスタイルの効果を試したりしてください。
できるだけ1本の1本のフライトに、テーマを持って理論を確かめながら挑んでほしいと思います。
3 色々なソアリング
2018.08.16
スロープソアリングは、初めはスロープ全体をサーチしますが、上昇する所に絞り込んでソアリングをしてフライトイメージを作り、飛行中はつねに高度が下がってしまわないあらゆる努力をあきらめずに繰り返します。間違っても上がらなかったところへもう一度戻ってしまう飛び方はNGです。
スロープソアリングやサーマルソアリング中に前の機体が急に下がりはじめたら、サーマルの後ろの下降気流のはまった可能性が高いわけですから、その風上に進路を取りサーマルをサーチしてみます。
ソアリング中の僕は、刻々と秒単位で忙しく目標を変更しています。
スロープソアリングは、基本、ポーラーカーブの最少沈下速度で飛行していますが、サーマルソアリングは、最良滑空比で飛行しています。
スロープソアリング中に上昇するパイロットを見つけてそのゾーンに入ります。前を飛行しているパイロットが下がり始めたら、すぐにUターンです。
スロープソアリング中100m~200m先の木や笹が強い風になびいているのを見つけて、その強い斜面上昇風に入り込んで小さく8の字旋回で上昇し、山頂より高度が取れたならセンタリングを始めます。
つねにできるだけバリオが鳴る所だけで飛行します。
誰かがセンタリングをはじめたら、一番上がりの良い人を見つけて、そのサーマルを利用します。(先に旋回センタリングしているパイロットに、旋回の方向を合わせて下さい)
サーマルで上がり切っても、下からセンタリングで上がってくるパイロットを探し、どの位置のサーマルに勢いが有るのか見つけてアクセルを踏んで突っ込みます。(アクセルを踏む理由は、そのサーマルの勢いに寿命が有るからで、1秒でも早くそのサーマルに入るためにです。周りで飛んでいるパイロットは、どこにサーマルが有るのか教えてくれるために飛んでいるのだと思ってください!)
近くにエネルギーのあるサーマル雲が有るのなら、雲の白さと形を見て次のサーマル雲まで移動してみます。
夏から秋にかけて、エネルギーのあるサーマルには地上から舞い上がってくる虫が見えてサーマルだと分かることが時々有ります。観察してみてください。(虫でサーマルが見えるのです)
サーマル雲の色で判断しています。
出来たばかりの真っ白い勢いのあるサーマル雲と、灰色になって吸い込む上昇風のエネルギーの無くなった雲を見分けます。灰色になったサーマル雲は上昇気流もなく、まもなく消えて無くなります。(勢いのなくなったサーマル雲がどうして灰色になってしまうのか僕はわかりませんが、灰色の雲がすぐに消えて無くなるのを、日常的に観察しています)
留寿都村の中心部まで何度も飛んで行っています。
橇負山からまっすぐ行ける日もありますが、国道手前の畑か道の駅から上がってくる勢いのあるサーマルで上昇してからが多いです。
村に入っても、火傷するほど焼けているはずのトタン屋根からのサーマルを感じたことが有りません。でも、村の中心にある大きなグランドから出るサーマルが有ります。他には、国道のアスファルトから出ているのかなーと思うサーマルも有ります。
南風の日は、斜面上昇風とサーマルで高度が取れたなら、真下の林の外側まで出て行って、サーマルフライトを楽しんでみましょう。
勢いのあるサーマルは、そのコアのすぐ後ろに独特な気流の乱れが有って、風下からサーマルに入り込むときは、まもなくサーマルに入ることが分かります。
もう一つ、特異なサーマルにアーベントテルミックが有ります。
カンカン照りの夕方、橇負山の真下にある林から出るアーベントテルミックは、とても広い範囲で上昇気流ゾーンが出来ます。
日中の日差しが林に熱を蓄熱して、夕方急に気温が下がると蓄熱している林からとても広い範囲でとても安定した上昇気流が出てきます。こんな日の夕方は、初心者も全員のんびりとソアリングができます。
密度の濃い針葉樹が日中の太陽熱を蓄えています。川沿いの沢地にある林からは地面温度が低いせいで、アーベントテルミックは出ないです。
サーマルはその発生地点も上昇中も風に流されながら上がってきています。
あたりまえのことですが書きます。それらのサーマルは熱源の真上ではなく、サーマル源の中心よりも風下側で上昇風が始まっていて、風に流されながら上がってきていますから、風下300メートル前後まで流されて上昇風に遭遇するのが一般的です。
風の向きを計算して、まっすぐ風下から狙うことで、サーマルに遭遇する確率を上げるのです。
下降気流について
下降気流は、スポット的に上昇するサーマルに比べ、大きな範囲で全体的に下降気流なのが一般的です。温度が上がらない林や草地などの大きな範囲で起きているのですが、上昇するサーマルのすぐ後ろ(風下)が少し下降気流になっている事が一般的です。
僕は向い風で飛んでいるときにサーマルの手前でその気流の乱れを感じた後にサーマルの突入する体験を何度もしています。なのでスポット的に下降気流を感じたら、その風上に進路を取ってサーマルをサーチするのです。(有る時と無いときが有るけど、有るかもしれないのでサーチです)
相対的には川を伴う冷えた沢地、水の満たされた水田などは強力な下降気流になっています。林や草地もサーモメーターで測定すると20度以下なので下降気流です。
4 サーマルに遭遇したら
2018.08.16