5 尻別岳への行きと帰りは
2018.08.16

南風の橇負山から尻別岳ねらいは、道の駅方向の畑か道の駅から来るサーマルで高度を稼いで向かいますが、スロープソアリング中でもコンディションが良いと判断すると、プラス150m程度でも尻別岳に向かっています。少し東回りで飛んでいき、カイト山南斜面でルスツリゾートの駐車場のサーマルを利用して、8の字旋回やセンタリングすることで一気に尻別岳の高さまで上昇します。なかなか上がらないようなら、サーマルブローの周期まで少し待ってみましょう。こんな日は、初級機でも誰でも簡単に尻別岳まで行けるのです。
尻別岳ねらいは南か南南東の風の日が狙い目です。風を読んでトライしてみてくださいね。サーマルコンディションの日は簡単です。

尻別岳からの帰りは
帰りは風が弱い日は適度にアクセルを踏んで、風が強い日はフルアクセルでカイト山南斜面まで戻り、そこでもう一度駐車場のサーマルブローを利用して、できるだけ上昇しておいて、そこからはフルアクセルで橇負山の南斜面に戻りますが、その位置からはゴンドラ駅より右に進入しないで戻るのがセオリーです。

ゴンドラ駅より右の山頂中心部で進入して低くなると、下降するウエーブにはまってしまい、高度が下がってしまえば乱気流にたたかれます。
カイト山からは、橇負山からの風の流れをイメージして、ゴンドラ駅真っすぐか、わずかに右に見ながら戻ってくるのが安全です。

向い風では特に
向い風との戦いや次のサーマルまでの前進においては、ハーネスのサイドベルトを緩めてリクライニングし、抗力を小さくすることでさらに加速して滑空比が伸びるのです。とくに向い風との戦いでは、リクライニングする事が大きく結果を左右します。
でも、メンターのように飛行速度が有るキャノピーは、抗力の小さいポッドハーネスとの併用で尻別岳からストレスなく戻れる時もありますが、手抜きをせず風を読み、油断せずに最良の飛行コースを選びながら戻ります。
高度が下がってしまってもカイト山や尻別岳にもう一度戻り高度を取り戻してトライです。

クロスカントリーフライトにおいてハーネスをリクライニングして抗力を小さくする意味は、穏やかな下り坂で自転車のブレーキを開放するのと同じなのです。
アスリートがポッドハーネスを使用するのは、リクライニングスタイルよりもさらに抗力を小さくするためです。

西風の日の尻別狙いは
僕は西風で何度か尻別岳に行っています。スロープソアリングをしながら上昇し、一番北にあるデコ山で高度が少し下がるくらいまで西に前進しておいてから一気に尻別岳の中腹にへばりついて、8の字旋回で上げ直しをします。
(デコ山で高度が少し下がるくらいまで西に前進する理由は、尻別岳まで西風と戦いながら編流飛行するベクトルの改善ができるからです)

一度、あげ直しが出かなかったことが有るのですが、理由は、8の字旋回が尻別岳に接近しすぎていて、尻別岳よりもう少し西側の畑から勢いのあるサーマルが出ているせいで、僕の8の字旋回が、そのサーマルの後ろであったために、尻別岳の斜面上昇風が弱かったわけです。
トップアウトをあきらめて高度100mを切ったあたりで、その畑の大きな上昇風に遭遇したことで、風を理解したわけです。
なので、西風の日は斜面よりも西に出て行って、畑からのサーマル帯を意識してコース取りをお勧めします。

もう一つの方法は、カイト山まで回り込んで、斜面上昇風のみで尻別岳に行く方法が有ります。

西風の尻別岳からの戻りは、編流飛行で簡単に戻ってこられます。

西風の尻別岳へのトライは、失敗しても真下に着陸できる所が有るので安心です。
ルスツはよそのエリアと違って、うまく戻れなくてもあちらこちらに安心して着陸ができる所が有っていいですね。乱気流になっていないところを選んでランディングです。



サーマル雲の色
2018.08.16

よく見るとサーマル雲に色の違いがあることに気が付きます。

その雲が日陰になっているからではなく、まもなく消えてしまうサーマル雲なのです。空気中の目に見えない水蒸気が、上昇気流とともに気圧と温度がが低くなり、露天温度に達した結露が真っ白なサーマル雲(入道雲)となり「ここまで大きなサーマルが上がってきていますよー!」と、教えてくれています。それはサーマルの勢いがあるしばらくの間縦に成長し続け、時にはパラグライダーが飛行できないほどに成長します。

しかしやがて白く輝く水蒸気は次第に大きな水滴となり、灰色に見えてきて数分で消えてなくなります。サーマル雲のような小さな雲はそこから降り始める水滴が地上まで落ちてくる前に目に見えない水蒸気に気化してしまいますが、大きなの入道雲から落ちる雨粒は、気温が低くなった下降気流や勢いのあるダウンバーストとともに地上まで落ちてきます。

僕たちは、できたばかりの真っ白なサーマル雲まで上がってくる勢いのある上昇風(サーマル)を利用しているのです。

その雲の雲低高度がエマグラムによる露店(雲低高度)です。露店より温度が低くなると目に見えない空気中の水蒸気が目に見える水滴に変わり始める境界線です。エマグラムを見ると、その高度で一度気温が上昇しているのがわかります。

もう30年以上前、グライダーのセールプレーンで有名な「滝川スカイパーク」では、気温や湿度の変化を観測して、毎日計算式で雲低高度を割り出していました。ちなみに晴れている日であっても雲低高度が存在していて、サーマルの勢いがその高さで温度が上がるために、上昇する勢いが少し飽和されてしまいます。とくにルスツ地面の海抜がほぼ400mありますから、地表のサーマル源と上空のサーマル雲の高度差が小さいせいもあって、あのサーマル雲はおそらくあの畑から上がってきているサーマルだとわかりますから、比較的狙いやすいのです。

もう少し深読みをすると、勢いのあるサーマルが出ているすぐわきの林や沢地が有る程度の下降気流になっているはずだと判断してください。

晴れていて上空に冷たい寒気が入っている春先や秋には、朝方の気温が低く、日中の温度差が大きい日、ランディングとテイクオフの温度差が大きい日は、上昇気流と下降気流が活発に上下しています。

サーマル雲の色を観察しています。

ほかのページにも書いていますが、できたばかりの真っ白なサーマル雲は勢いのある上昇風が上がってきています。でも、灰色になっているサーマル雲は、上昇風も終息していてすぐに消えてしまいます。






6 XCフライトについて
2018.08.16

サーマルハンティングが上達したならば、その次はクロスカントリーフライトです。
地形のサーマル源の分析や上空にある真っ白いサーマル雲や風の向きと山岳地形とを分析した斜面上昇風、時折できているクラウドストリートなども利用します。

尻別岳トップアウトからクロスカントリーフライトは、春が一番おすすめです。
理想的なのは、10時を過ぎて日差しが十分強くなり、まだ何も植えられていない畑が乾いていて、十分に暖められている事が条件です。大滝村方向や中山峠方向、そして京極方向でも良いのです。暖められたサーマルが飛行コースのどの位置に上がってきているかをイメージして、サーチしながらリフト帯を飛行します。

畑からのサーマルで十分なのですが、春先はさらにいくつものプラス要因が有ります。
気温が低いこと、上空に冷たい寒気が入っている事、大きな川は水温が低くてその河川敷全体の地面が冷たい事、林の中の北斜面にはまだ残っている雪のせいで、河川敷も林も勢いよく下降気流になっていて、畑で暖められたサーマルの勢いを後押ししているのです。
もし、その季節のフライトに出会えたなら、畑に沿ってどこまでも飛んで行けます。

ですから、飛行コースは手堅く畑から風に流されて上がってくるサーマルコースを飛びます。たとえ遠回りであってもできる限り幅のある林を横断せずに飛行します。

ためしに幅のある河川敷や林を横断すると分かりますが、ものすごい勢いで下降気流ですから、Uターンしてフルアクセルで脱出です。(下降気流からの脱出は、ブレークコードを引いてゆっくり出てくる操作は、理論的に間違いです。沈下を遅くしようとする努力は、飛行速度も遅いために時間がかかってしまい、下降気流からやっと出てきたときの高さが低いのです。)そして仕方なく下降気流を横断するときもフルアクセルです。

追い風でのクロスカントリーフライトは、少しブレークコードを引いていた方が飛行距離が出ます。ポーラーカーブの最良滑空速度よりも少し最少沈下速度寄りに飛行する事が理論的なのです。もう少し詳しく説明すると、ポーラーカーブのグラフに追い風の分の対地速度がプラスされるので、Y軸の座標軸が追い風の分だけ左に移動し、そのX軸Y軸の交点から延びる線とポーラーカーブの接線がそうなるのです。向い風はその逆ですからアクセルを踏むことで、対地距離において滑空角度が良くなるのです。

追い風で飛行中にヒットするサーマルは、あっという間に過ぎてしまうので、すぐに、これでもかと言わんばかりの急旋回をしてそのサーマルにとどまりセンタリングを始めます。

その日のコンディションを深く分析します。
僕が時折書き込みをする言葉に「上空に冷たい寒気が入っている日は・・」と伝言板に書き込みをしていますが、そういう日は天気予報に朝の気温と日中の気温差が大きく書かれていますし、テイクオフとランディングに大きな気温差が出ます。
天気予報の風予報のほかに、気温の予報の中にサーマルコンディションを読み取ってくださいね。

田村さんはニセコランディングに着陸しています。平野さんは喜茂別の双葉から大滝村まで回り込んで、昭和新山の近くまで飛んでいます。
そんな日のサーマルは高度による気温差も大きいので、上昇してもいつまでも周りの大気との気温差が大きいせいで上昇の勢いが衰えませんから、しっかりセンタリングをすることで雲低高度まで上昇します。

いわゆるエマグラムで表す逆転層の高度が雲低高度になるのですが、その雲低高度を超えてさらに上昇する事はなかなかできないのですが、入道雲の中心に入り込んでセンタリングをすると更に上昇します。
僕はハンググライダーの時代にあえて体験しています。かなり上昇すると周りが真っ白で、真下だけぽっかり地上が見えるのですが、その後はとんでもなく気流が悪くなって、いったい何時この入道雲から出られるのだろうという思いをしています。ハンググライダーであれば、翼は潰れないし、きりもみ状態になることも考えにくいのでやってみたのですが、空中衝突も含めてパラグライダーでは危険だと思います。
入道雲に吸い込まれそうな時は、両翼端折りのフルアクセルで、上昇風ゾーンからエスケープしてください。

しかし雲が発生していなくても、雲低高度の気流が入道雲のようになっている事が有りますから、一度雲低高度まで上昇して頭打ちになっても、あきらめずにその気流を探してみてください。サーマルに勢いのある日には是非。
(競技中に故意に雲中飛行をすると、空中衝突の危険行為として、失格する事が有ります)

ルスツは、どこにでも着陸できそうな場所が有るエリアですから、気軽にどこへでもクロスカントリーフライトに挑戦できるのです。



7 キーポイント
2018.08.16

キーポイント1
色々な高度処理エスケープ
雲に吸い込まれそうな時や狭い範囲への着陸は、両翼端折りが一般的ですが、千歳で空撮の仕事をしている仲間から「入道雲に吸い込まれてどうしようもなくなって、ブレークコードを手に巻いてフルブレーク状態を続けることで、やっと脱出できた」と聞いています。
ブレークコードを手に巻いてフルブレーク状態を続けると、最初に座っているイスを後ろに倒されるような挙動が有りますが、その後は安定して後ろに後ずさりする沈下です。
フルブレークによる降下操作は腕力がいりません。手に巻いたブレークコードは操縦操作ができるので、後ろ向きの進行方向を目標に操縦ができます。
回復操作は、ブレークコードを徐々に上げてキャノピーが少し前に出たタイミングでブレークコードを開放します。キャノピーを頭上安定させるタイミングは皆さんがノービスパイロットの時に何度か練習をしたピッチングを止めようとする操作と同じです。
Bストールでは、かなり腕力のある僕でも、せいぜい100m高度を下げるくらいで力尽きてしまいますから、強い上昇の中からは脱出しにくいです。
Aストールは、技術も腕力もいらない降下手段ですが、ここでは省略します。
スパイラルは、技術が有れば10m/S以上の沈下もできますが、体にかかるGが大きすぎて、僕は3回転まで3回ほどしかやったことが有りません。(かなり首と体に力を入れて頭を起こさなければバリオを見ることが出来ませんでした)普通のスパイラルでも気持ちの良い物ではありませんし、スパイラルからの回復操作を理解していないと、外側のブレークコードを引いただけでは急にキャノピーが回復しますから、大きくピッチングすることもあり危険なのです。
これら緊急の高度処理は勢いよく沈下しますから、下にいるパイロットとの衝突に気を付けて下さい。

キーポイント2
山頂に来る周期的なサーマルブロー
古い自慢話になってしまいますが、僕がハンググライダーを始めたころは、道内のほとんどの大会に出ていて、そのほとんどが1位から3位であった時代のお話です。
春に比布(ピップ)の大会が有り、山頂で15機ほどハングがフライト準備を始めていた時、風が良いのですが、時折風が4mを超えるので時間を計ると、ほぼ12分周期くらいで山頂にサーマルブローが入っている事に気が付いて、次のブロータイムに合わせて僕がテイクオフしたことが有ります。
結果、1本目の僕はダントツの1位でしたが。着陸の時に翼の一部が壊れて、2本目のフライトにエントリーできず、合計得点で2位になりました。
エリアによっては周期的なブローが上がってくるエリアが有るのです。橇負山南斜面ではこのような周期的なブローは感じませんが、西テイクオフではそれを感じる時が有ります。

キーポイント3
アスリートのバリオメーターは
バリオの音にタイムラグのない物、飛行中のサーマルが有った所の軌跡が残るバリオを使用するのはもちろんですが、僕らとは設定が違います。
下降気流の設定を0.5~1mの範囲でシンクレート設定していて使用しているか、もう一つ持っているかしています。
フライト中は降下中の音色が鳴りっぱなしで飛んでいて、音色が止まったらわずかな上昇気流が有ったことになるので、サーマルサーチを始めるのです。
要するに、バリオがプラスを示して鳴りはじめるのを待ってサーチするのではなく、沈下が少なくなったら、サーマルのすぐ横を飛行している可能性が有るので、サーマルサーチし始めているのです。
僕もバリオをその設定で飛行していたことが有りますが、飛行中がやかましいので、今はやめています。
もう一つ、セールプレーンの高性能機は翼の中に100リットル以上もの水タンクが有るのです。重くすることで沈下速度が速くなってしまうのですが、滑空性能は同じで飛行速度が速くなるのです。                                         パラグライダーのアスリートはハーネスに水バラストを10リットル以上も取り付ける人がいます。そして一ランク大きなサイズのキャノピーに乗ることで、レイノルズ数で有利になるからです。反対に体重の軽いパイロットはその分小さなキャノピーに乗るので、何パーセントも不利なのです。

キーポイント4
最近のキャノピーにはスピードブレークライザーが出始めています。
ブレークコードによる操縦ではなく、Dライザーを引き下げてライト兄弟のライトフライヤーのように、翼の全体をねじるようにコントロールする仕組みですが、パラグライダーは飛行速度が遅いのでアドバースヨーで旋回していますから、翼をねじって旋回する方向がライトフライヤーとは逆方向です。
最新のものは、Bライザーもリンクして引かれる仕組みの物が出てきて、キャノピーの上面にシワが出ないものまで開発されています。ブレークコードを引くことによる抗力よりも、速度を保ったままの旋回ができる仕組みですが、ライトフライヤーが、ラダーと併用する操縦方法で旋回しているように、しっかりと体重移動しなければ思うようには旋回しませんし、小さな旋回には向いていないのですが、クロスカントリーフライトには有効な手段かもしれません。
でも僕の理論では、大きな旋回においては体重移動だけで旋回する事が最もロスのない効率の良い旋回です。

キーポイント5
風の向きが急変する前の暴れるような揺れ
長年飛んでいると風の向きが突然変わるそのわずか数分前に大きな揺れを感じます。
真下にはサーマル源も無く、気流の乱れが起きる特別な地形が無いのに突然の揺れに遭遇しますが、サーマルや気流の乱れとは違う特別な揺れです。
20年以上のモーターパラフライト経験の中で何度も体感し理解していて、ピュアフライトの中でも感じています。


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